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エネルギーと仕事

エネルギーって何

前章まで、運動方程式を導いてきた。これは時間ごどのように変化するかを表した量であるが、問題は運動が複雑になると追うことが難しくなることである。

例えば、高いところから物を落とすとすると、下に行くほど速くなるというのはわかると思うが、どんな道を通って落ちていったかは、あまり気にしていない。

また坂道を転がしても、まっすぐ落としたとしても、同じ高さであれば、だいたい同じ速さになるということがわかる。

同じ高さからまっすぐ落下させた時と、坂を下るときで、最終的な速さが同じであるということだ。

つまり途中でどう動いたかではなく、「最初と最後の状態」を見るだけで、運動は理解できるのではないかということだ。

特に、全体を通じて、変わらない量があれば、知りたい時刻において、ある一つの数値を調べることで、全体の運動を理解するということができれば、非常に便利である。

観察

事実を整理していきたい。まず高さが高いほど、速くなるというのは、重力加速度のパートを学習されていれば分かると思う。また先ほどのアニメーションの通り、経路が違っても、最終的な結果は同じである。それはどのように動いても、ゆっくり動いても、速く動いても関係ないことがわかる。坂道の傾きを変えてみて、物を転がす、といった状況を考えてみるとわかると思う。

ここで気づくことは、運動の結果は「時間のかかり方」に依存していないということだ。

では、時間を追うのではなく、「状態」の変化を見ることを考えてみるとどうなるだろうか。

モデル

ここで、その状態を考えるために、3つの概念を導入する。

仕事

運動方程式の章までに、力を加えると、物体の運動が変わることを示したが、ここで、物体ではなく、力を加えた側の視点に立ってみる。

例えば、人間が物を押して移動させたとする。このとき、人間が「何かした」ということを表せれば、非常に便利である。(視点を変えることは往々にして有効である)

さてその量として、「力が」「ある距離」「その方向に」働いたとき、その効果を仕事と呼ぶ。

その定義を数式を用いて表せば、

\[W=F \cdot x\]

と表せる。ここで重要なのことは向きがあるということ、そして動かなければ仕事はゼロであるということである。

運動エネルギー

速く動く物体ほど、止めるのが大変であり、物を壊す力も大きい。つまり運動そのものが価値があるということである。この時、速さ\(v\)、質量\(m\)に依存する量として、

\[\frac{1}{2}mv^{2}\]

という量でもって、これを運動エネルギーと定義する。(なぜこの量になるのかというのは、実は数学的な理由があるが、興味があれば微積分を駆使して、このように定義することが便利だということが分かる)

さてここで、対応関係として、仕事をすると、速さが変わるということから、

仕事と運動の変化が等しいというわかる。

すなわち、仕事を\(W\)、運動エネルギー\(K\)の変化を\(\Delta K\)(物理学では変化を表すとき\(\Delta\)という記号を使う)とおけば、

\[W=\Delta K\]

である。これを仕事とエネルギーの関係という。

位置エネルギー

速さを追うにあたり、位置に着目したい。つまり、ある物体がある位置に存在することで、蓄えられるエネルギーを定めると便利である。なぜなら、日常経験的に位置が高ければ高いほどそこから落ちたときにより早い速さで地上に落ちてくるということがわかるからだ。それは、ある位置に存在しているだけで、落下すればある運動エネルギーを獲得するということを意味する。このように、ある位置に存在するときに物体が獲得するエネルギーのことを位置エネルギーあるいはポテンシャルエネルギーと呼ぶことにする。

前章までの内容を考えれば、運動方程式を考えると、質量を\(m\), 重力加速度を\(g\)、とすれば、\(F=mg\)と書ける。

すなわち、仕事の定義を考えれば重力のする仕事は、

\[F \cdot h = mgh\]

と書ける。エネルギーと仕事の関係から考えると、これが位置エネルギーということになる。

検証

ここでは、具体的な例として、「自由落下」を通して、エネルギーを考えてみる。地球上で高さ\(h\)から落とすことを考える。

そして、この時、運動エネルギーと位置エネルギーがどうなるかを考えたい。

結果

エネルギーが時間を追わないものであり、最初と最後の状態ですべて決まることがわかる。そして何より強力であるのは、「時間に依存しない」裏を返せば「常に成り立つ」ということである。これを保存則と呼び、あらゆる時間での状態を調べることができる、重要な性質である。

例えば、今回のモデルでは

\[\frac{1}{2}mv^{2}+mgh=const.\]

である。それはすなわち、各時間ごとの高さを調べることで、速さを導けるということである。これは運動方程式を解く必要がない点で非常に強力なツールである。

実は運動方程式から運動エネルギーや位置エネルギーを考えることができる。ここでは運動方程式にある操作をすることで運動方程式からエネルギーの保存則を導くことが可能であることを示す。

運動方程式は、

\[m \frac{dv}{dt}=F\]

というようになるから、これを\(x_1\)から\(x_{2}\)まで積分する。

\[\int_{x_1}^{x_2}m \frac{dv}{dt}dx=\int_{x_1}^{x_2}F \, dx\]

というようになる。

さてここで、左辺は置換積分をすることができる。 これは、

\[dx=\frac{dx}{dt}dt\]

を使って積分変数を\(x\)から\(t\)に変化させることができる。

この時には、

\begin{aligned} \int_{t_1}^{t_2}m \frac{dv}{dt}\frac{dx}{dt}dt &=\int_{t_1}^{t_2}mv \frac{dv}{dt}dt\\ &=\int_{t_1}^{t_2}\frac{d}{dt}\left( \frac{m}{2}v^2 \right)dt\\ &=\left[ \frac{m}{2}v^2 \right]^{t_2}_{t_1}\\ &=\frac{m}{2}v_2^2-\frac{m}{2}v_1^2 \end{aligned}

となることがわかるために、

\[\frac{m}{2}v_2^2-\frac{m}{2}v_1^2=\int_{x_1}^{x_2}F \, dx\]

というようになる。

ここからわかるように、運動エネルギーの差は仕事に等しい。

これは\(t_1\)の時に\(v_1\)であり、\(t_2\)の時に\(v_2\)というように決めている。

つまり、\(v_1\)から\(v_2\)になるときにエネルギーが減少していると考えることができる。

運動エネルギーは積分から仕事と関連付けることができる。

運動エネルギーの導き方は次の方法がかなり簡単なので慣れてきたらこちらを使うとよい。

まず初めに、\(m\frac{dv}{dt}=F\)というように運動方程式を書く。次に、両辺に\(v\)をかける。

\[mv\frac{dv}{dt}=Fv\]

というように書くことができる。

さてこれを計算していくと、

\begin{aligned} \frac{1}{2}\frac{d(mv^2)}{dt}&=F \frac{dx}{dt}\\ \frac{d}{dt}\left(\frac{1}{2}mv^2\right)&=\frac{d(Fx)}{dt} \end{aligned}

さてここから両辺を積分することにより、

\[\frac{1}{2}mv_2^2-\frac{1}{2}mv_1^2=\int^{x_2}_{x_1}F \, dx\]

というようになる。したがって\(\frac{1}{2}mv^2\)という値は、\(Fx\)という仕事に等しいという関係が成り立つ。これは、運動エネルギー\(\frac{1}{2}mv^2\)を持った物体は\(Fx\)の仕事をすることができるということを表している。

位置エネルギーの積分からの導出

さて以上のことから運動エネルギーを考えると運動エネルギーの変化分は、すべて力による仕事であるということが言える。ではその仕事が重力の場合では右辺はどのようになるだろうか?これを計算してみよう。

右辺をもう一度書くと

\[\int_{x_1}^{x_2}F \, dx\]

となる。そこで、この\(F\)\(F=-mg\)とする。

さてこれを計算すると、

\[\int_{x_1}^{x_2}mg \, dx=-mg(x_2-x_1)\]

というように書くことができる。

つまりこれは、運動エネルギー\(v_2>v_1\)の場合運動エネルギーは増えることになる。その分だけ、位置エネルギーが\(x_2<x_1\)となることがわかる。また運動エネルギーが減る場合つまり、\(v_2<v_1\)の場合では、位置エネルギーは、\(x_2>x_1\)になるために減ることがわかる。

保存されるのは常に?

ここまで、保存料としてのエネルギーを見てきたが、保存されない場合があるのだろうか。

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